わたしの内出血

頼むから静かにしてくれ

アラベスク二番

 

 

 

地獄地獄、見晴らしの良い地獄から

この世に平和が存在するのだと知った。

 

ドビュッシーの「アラベスク二番」を聴きながら、コーヒーを飲んだ午後。

確かにそれが、存在していた。

 

どうでもいいけどドビュッシーが下ネタだなんて誰も教えてくれなかったわ。

そもそも、下ネタじゃないし。

 

 

ピアノ嫌いの母に育てられた為、一切音楽に触れずに育ったが

アラベスク二番」は私の中で特別な曲だ。

 

何が特別なのかは、わからない。

でも、とても特別な時に聞いたという記憶だけが残っている。

 

いつだっただろう。

小さい頃に見たアニメだろうか、元彼といった旅行先だろうか、

はたまた、夢の中だろうか。

 

夢の中かもしれない。

夢のように幻想的な旋律だから、夢の中で聞いたのかもしれない。

 

無知なもんで、この曲が「ドビュッシーアラベスク二番」と認識した時、

涙が自然と溢れてしまったのを覚えている。

まるで儚い、手の届かない、幸せの象徴のように感じてしまったから。

大学二年生の頃ね。

 

 

 

 

 

来年から一人暮らしをすることが正式に決まった。

父から、遂に、もう許してくれとお願いされた。

 

正直、うちの家族は限界である。

そもそも、家族なんて形はここ4,5年とどめていなかった。

あってないようなもんだから、辛くはない。

 

崩れている家庭が、何とか形を保っては崩れ、また少し平穏になる日々を

眺める事はとても苦痛だった。

 

たくさん叱られた。

存在を叱られた、どうしようもない不幸を、叱られた。

 

 

幸せになる事はとても難しい。

人生はとても長い。

人生には取り返しのつかないことがたくさんある。

何が正解かなんて、私には到底わからない。

 

これまで「正解」ばかり追い求めてきた事で、世間との相違に苦しんできた。

模範解答と照らし合わせて、人生を自己採点する作業は、人を苦しめるから。

それを、「辛い」と嘆くのは、とても惨めなことだから。

 

 

でも、新しく私の人生が切り開けていくのを感じている。

絶対に幸せになってやる。

 

 

本当に、もう悲しい思いを父にはさせたくない。

誰よりも、幸せに生きて、長生きしてやる。

 

アラベスク二番が流れる午後2時、そう決意した。