髪が伸びるたび 生きてるとわかるんだ
それだけが僕を落ち着かせるんだ
最近髪が伸びた。
私は今年の6月にバッサリショートにしてから髪を伸ばしている。
気がつけば、大学に入った頃は魔女のようにロングヘアで
秋からは、飽きたらその都度ボブに揃えていた。
流石にうなじがガン見えするほど短くしたのは人生で初めてだ。
美人はショートが一番映えるというけれど、私はどうだろうか。
現在はやっと首が隠れてきた。
うんとロングにして、地雷女になってやる気満々なのである。
最近自担の眉毛の伸び具合で生を実感している。
私が応援しているアイドルは身長が162センチしかない。
しかし、舞台で鍛えられた声帯で出す歌声はとても小さな体とは思えないほど深い。
そんな彼は時々センター分けにする。私もセンター分けにした。
彼の眉間を大きく斜めに横切る、整えられた眉毛は美しい。
しかし先日、雑誌の写真で眉毛が少し乱れていると確認できた。
所謂、ゲジゲジである。
ああ、今日も自担は息をしているんだなと実感した。生は美しい。
吉良吉影は自分の伸びた爪で健康状態を把握している。
毎日爪を切っては把握、保管をしている。
しかも、爪切りの中に保管するというタチの悪いタイプだ。
そもそも、毎日切るほど爪など伸びない、変態だ。
少年Bは不潔症で潔癖症だ。
湊かなえの「告白」を何度も読み返した。
その中に出てくる少年Bを思い出す。
彼は自分を汚らわしいと信じて疑わない。
人殺しでエイズに感染している自分は汚いから、触れるもの全てを除菌する、潔癖症だ。
一方で、不潔は生きている証拠だ。
だからこそ彼は、生を実感する為に、風呂に入らないし歯を磨かない、不潔症だ。
これまで自分は家から出なくても全く苦ではないと信じていた。
暇こそ最高の贅沢であり、時間を溶かす事は罪の蜜だった。
しかし、最近生を実感できない事が苦しい。
普段ブラブラとしょうもない事を考える暇さえも、し尽くしてしまった。
対人関係が無ければ、私は自己嫌悪にも陥らないからだ。
至極平穏な精神状態の中で、私は生き殺しなのだ。
何かと理由をつけて友人と電話するし、わざわざ買い物や犬の散歩に出る。
そんなこんなをしている中でも、ふとした瞬間、髪が伸びたと気づく。
ああ、爪も、眉毛も伸びているじゃあないか。
私は三日間風呂に入っていない。
